やすだ 😺びょうたろうのブログ(仮)

安田鋲太郎(ツイッターアカウント@visco110)のブログです。ブログ名考案中。

上野千鶴子さんにジジェクのことを質問してみたこと、あるいは性被害を語るときの問題(読書日録より)

某月某日 呉智英『知の収穫』に収録されている「読書日録」のなかに、石光真清『城下の人』について述べた次のようなくだりがあった。 「この本には、著者の年齢を始めいくつかの不自然な点が散見する。だが、このことは証言につきものの錯誤や主観性の表れ…

「詳しさのようなもの」について

なにかニュースを見て「こんな不正は許せない」とか「こんな良い活動をしている人がいるんだ」などと思っても、念のためネットで検索すると――ある種のホットな話題ではとくに顕著だが――さまざまなディティールや背景、「同業者のみが知る事情」、真偽の不確…

夢の意味について

夢分析には学生の頃から興味を抱いてきたが、じつに数多くの流派が存在する世界であり、また本質的に非アカデミックなところがあるように思う。手元のいくつかの本から著者の経歴を抜き出しても、学位を持ち、何らかの大学との繋がりを持っているものの、基…

自尊心が削られても、自尊心は削られていない

某月某日、精神状態の悪化が悪化し、あの2011年にお世話になった薬を引き出しの奥から探し出してスルピリド2錠、ロラゼパム2錠を服用した(こうした薬の期限はだいたい5年らしいのだが、5年大丈夫なら8年でもいけるだろう)。ついでにお世話になったク…

六道、獣人、相模原 あるいは人間の「無」条件について

以前、どこかのお坊さんの説法集を眺めていたら、次のようなことが書いてあった。記憶を頼りに書く。 「悪いことをしたら報いを受けるなんて嘘じゃないか。先日そこのお地蔵さんに立小便したけれど、それから何も悪いことは起きていない」 こう云う者がいる…

ある錯誤のパターン 必要条件と十分条件

たとえば「ロシア人は背が高い」ことを証明するためにはどうすればいいだろうか。背の高いロシア人を連れてきても無駄である。背の高いロシア人を100人連れてきても同じことだ。 「ロシア人は背が高い」という命題にたいし「背の高いロシア人」は必要条件…

賢いわたしと愚かなわたし

寝て起きたら、妹からメールが届いていた。 内容は、実家にいる他のきょうだいAへの愚痴だった。 簡単に云うと、妹は先日めでたく結婚して実家を離れたのだが、妹の部屋を自分の部屋のものにしたいきょうだいAが「早く部屋を片付けろ」「いつまでに部屋を…

うるさがり屋のクラシック

偏見だ。当然のことながら。 モーツァルトはうるさい。 もちろん、西洋音楽史のなかでモーツァルトが比類なき天才とされていることを知らないわけではないし、西洋音楽史の基準に疑問をさしはさむものでもない。だがそれはそれとして、僕にはモーツァルトの…

「人間関係のリセマラ社会」について

【リセマラ】 リセットマラソンの略語。スマホゲームにおいてインストールとアンインストールを繰り返す行為のこと。 ほとんどのスマホゲームは、最初のチュートリアルを終了すると何回かレアガチャを回すことができる。そこで高レアリティの強キャラを当て…

休日を迎えるあなたへの手紙

いま、ひとつの休日の終わりにこれを書いている。新しい休日を迎える自分に充てて。今度こそしっくりくる一日を過ごして欲しいからだ。 けれど、具体的にどうしろということは云えない。もしうまい方法がわかっていれば、今日だって素敵な休日になったはずだ…

この記事もモテるためである(『すべてはモテるためである』書評)

すべてはモテるためである (文庫ぎんが堂) 作者: 二村ヒトシ,青木光恵 出版社/メーカー: イースト・プレス 発売日: 2012/12/02 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 125回 この商品を含むブログ (36件) を見る 0.はじめに 1.二村ヒトシはフロイト派であ…

世界を「読む」という欲望について

高山宏『殺す・集める・読む』は文庫本ながら*1 彼らしい稀有壮大な仮説に満ちた文化史的ミステリー論だ。冒頭を飾る三つの論文はシャーロック・ホームズについてのものだが、そのなかで高山は、十九世紀末にピークとなった推理小説ブームの土壌である当時の…

雑誌、この猥雑なもの

1.余剰としての雑誌 「週刊誌の鬼」の仇名で知られ、池島信平や花森安治と並び称された雑誌編集者の扇谷正造は、『週刊朝日』の編集長時代、大阪を訪れたさい地元の有力販売店の店主に「あなた、人を訪問される時、どこからお入りになりますか」と尋ねられ…

新聞は必要か?

僕はここ何年も、新聞を取ったりやめたりを繰り返している。 取るときはずっと購読するつもりで取るのだが、しばらくたつとあまり読まなくなり配達所に取りやめの電話をかける。でもまたちょっとすると再開する。毎度のことで気恥ずかしいので、電話の態度は…

商品として見た『欲望会議』(シバエリ増量中)

欲望会議 「超」ポリコレ宣言 作者: 千葉雅也,二村ヒトシ,柴田英里 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/12/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る こんにちは、安田鋲太郎です。 『欲望会議』、話題になってますね。僕も読みました。ツイッタ…

正月に一人ぼっちで伊勢エビを食べた話

妹が伊勢エビを送ってきた。 昨年結婚した妹は、年末年始を先方の実家で過ごす。そこから家ぐるみの年賀で伊勢エビを送ってきたわけだが、前日にメールで「父と三人で食べてね」という連絡があった。我が家は母がすでに亡くなっており、僕は実家を出ている。…

新年の8つの指針

こんにちは、安田鋲太郎です。 ブログについては、もっと敷居を下げて、気軽に更新してゆきたいなと思っています。論文じゃないですもんね。そんなわけで、こういう「他人から見たら読む価値があるかどうかちょっと微妙なテーマ」でも書いてしまいます。 タ…

「体験的読書」について

このところ、新年が近づいてきたこともあって、にわかに旧習の幾つかを断ち切って新生活を迎えたいという気持が高まり、それで新聞や雑誌や本やテレビ等との付き合い方に、かねてから薄々思っていたことを実践に移してみた。 その実践というのは、ようは「体…

夢のような感覚で過ごす方法

夢を観ている時の、あの現実感の希薄さ。一見昼間と変わらずに生活しているように見えて、どこかその着実さ、束縛でもある確かさから浮遊しているあの感じ。その中で私たちは、しばしば無鉄砲になり、モラルを見失い、そしてひどい悪夢に転落する。*1 もし現…

素人童貞という不気味な男

昼休み、またピンクサロンに走り出していた 作者: 素童 出版社/メーカー: ぶんか社 発売日: 2018/11/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 素童『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』。 一読して思い浮かんだ「料理法」は二つあった。…

マスコミの空白、ネットの退廃

1998年、アメリカ・カリフォルニア州の小都市ベルにある地方紙が休刊し、市役所を担当する記者がいなくなりました。記事(安田:2011年朝日新聞デジタル)によると、そのことをきっかけに、市役所所員トップが自分の年収を500万円から12倍の6400万円まで段階…

「人生は40から」って本当ですか?

たまには筆の赴くままに、どこに辿り着くのかわからない文章を書いてみたい。はっきり言って、話の流れ上よく知らない領域に踏み込んでしまったりもしているが、間違いなく言えることは、これはいまアラフォーの人に、またかつてアラフォーだった人、将来ア…

「死亡率300%の手術」はなぜ起こったのか

リチャード・ゴードン『世界病気博物誌』*1によると、ロバート・リストンは史上唯一、一度の手術で三人を死亡させた医師だという。その記述は次のようなものだ。 リストンのもっとも有名な症例 腿を二分半以内で切断した(患者は化膿壊疽のため、後日病棟に…

死んだ母から曽祖父が生まれた話

僕の曽祖父には伝説がある。それによれば、曽祖父は一度死んで生き返った母によって出産されたのだという。そして生き返った母から生まれたため、兄たちがいるにもかかわらず一から数えなおして「一郎」という名前になったというのだ。 なるほど明治の話なの…

秘かな時間を持つこと

時には誰もが寝静まった夜に、ひとり起きていたい。 そういう時間を、ツイッターを始める前は多く持っていた。独身の頃はさらに多く。 それは確かに、孤独と隣り合わせではあった。人の集まりに顔を出す、しばらく会ってない友人には連絡を取るといった社交…

殺人現場の食卓/反動形成について

たとえばサスペンス番組で、夫が帰宅したときテーブルにご馳走が並べられていて、夫が上着を脱ぎながら「お、今夜は豪勢だな。なにかあった?」と妻に尋ねたならば、視聴者はかすかに不吉な予感がするだろう。さらに妻が「たまにはこういうのもいいでしょ」…

ネコ訴訟から「人はなぜ相手を悪魔化するのか」を考える

九十年代初頭、統一まもないドイツにおいてある裁判が行われた。訴えたのは名もない新婚夫婦。告訴内容は「自宅の前庭を隣家のネコがトイレ代わりに使っている」というものだった。 だが係争の過程で、問題のネコは原告の前庭で排泄したことが全くないことが…

モノへの愛惜について

僕は古書を売ったり買ったりする仕事をしているのだが、本を売りに来るお客さんが、しばしばこんなことを口にする。 「値段はつかなくてもいいので、できれば誰かに使って欲しい」 これを聞くたびに僕は「あー、またか……」と内心思ってしまう。捨てるのは可…

「泥棒のマーキング」について

これは、あまり書きたい話題ではないし、喧々囂々と騒がれたくもない。じゃあなんで書くのかといえば、誰かが云っておかなければならないという義務感のようなものだ。したがって、なるべく手短に書いてネットの片隅に放置しておくことにする。たまに辿り着…

ちんこ盗み猫 意味と背景

ちんこ盗み猫。見た瞬間に反射的にそう呼んでしまった、このちんこを咥えた猫の絵は、1555年ドイツで制作された作者不詳の版画(※1)である。 もちろんこんなものを前々から知っていたわけではなく、別件で西欧中世の泥棒について調べていた時(したがってm…