やすだ 😺びょうたろうのブログ(仮)

安田鋲太郎(ツイッターアカウント@visco110)のブログです。ブログ名考案中。

休日を迎えるあなたへの手紙

 

 いま、ひとつの休日の終わりにこれを書いている。新しい休日を迎える自分に充てて。今度こそしっくりくる一日を過ごして欲しいからだ。


 けれど、具体的にどうしろということは云えない。もしうまい方法がわかっていれば、今日だって素敵な休日になったはずだ。

 でも残念ながらそうはならなかった。どこでボタンを掛け違えたのかわからないが最悪だった。特別まずい事が起きたわけではない。むしろ微妙な精神的チューニングが合わずに無為に一日を過ごしてしまったというのに近い。午後から飲んで日が暮れる頃に寝て、先ほど目が醒めて頭痛と内臓のもたれに喘いだ。頭をよぎるのはとくに何の成果もなく一日が終わる後悔、職場の不愉快なやりとり、健康への不安、こんな感じで一生が終わってゆくのかという惨めさ。

 

 どうしたらよかったのだろう。もっと「ぴしっとやる」(早めに起き、新聞や雑誌を集中して読み、まともな食事を採り……etc)べきだったという思念と、そうではなく、もっと気負わずに心のままに過ごすことがよい一日に繋がるのだという思念が交互に頭をよぎる。あるいはその両方が幸福な結婚をすることによって、奇跡のような素晴らしい休日が生まれるのではないかという儚い期待も。
 朝、早めに起きるべきか、惰眠をむさぼるべきかもわからない。まるでどちらの足から歩き出すのか考えて歩けなくなった人のような滑稽さだ。だが幸い、たっぷり寝てなおかつ早起きする方法がある。それは前夜に早く寝ることだ。

 

 体がだるくなるようなことは避けたほうがいいだろう。酒を控えめにすること、食事は油っこいものを避け、野菜を摂ること。散歩やストレッチをすること。健康志向というより、もっと直接的な望みゆえにそうしたいのだ。だるいと何もする気が起きないから。

 

 ラカンはこう云っている(とジジェクに書いてあった)。欲望こそが世界に意味をもたらすのだと。欲望が凪になると人は動けない。だが食欲だとか、ちょっとムラムラするといった欲望は持続的ではない。休日を過ごすためにはもう少し持続的な欲望が必要だ。つまり趣味や活動、それに対する情熱や好奇心。

 一応、上述の約束事を守っているあなたは、体はだるくないとしよう。情熱や好奇心はあるだろうか。あなたがわりと熱しやすいところがあるのは知っている。たとえば仕事で不愉快なことがあったり、ネットでちょっとした文章を読んだだけですぐ発奮する(自分も発言したい→そのために勉強しよう!)。あるいは思想・言論系の本や動画を見てやる気を出したりもする。
 だが熱しやすく冷めやすいのがあなたの残念なところでもある。発奮するのはせいぜい前日の夜くらいだろう。休日の朝になると、はやくも新聞の内容に身が入らない。雑誌にもテレビにもいまいち集中できない。本は集中できる時もあるがいつもではない。そして気付くとツイッターばかり眺めて(ツイッターも控え目にすべき)、心が空虚になり、QOLは下がり、まだ明るいうちから酒を飲み始める。いつのまにか今日のような最悪の一日コースに入っている。

 

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 ではどうしたらよいのか。
 その点はケリー・マクゴニガルがうまいことを云っていた。僕の言葉でいうと「勝負は半日前についている」というような話だ。たとえば痩せたいのなら、空腹になってからファストフード店に入る欲望と戦うのではなく(それはすでに負けている)、ヘルシーな弁当を持参するべきだと。つまりさっきの「早起きしたかったら早寝する」のと同じことだ。
 そんなわけで休日にモチベーションを上げたいのなら、事前に準備をしておくべきではなかろうか。
 実を言うとこの手紙――新しい休日を迎える自分に宛てた手紙じたいが「事前の準備」である。これを読んでいるであろう休日を迎える自分に、今日の後悔を知ってほしい。こんなことを繰り返して死んでいきたくはないと。

 

 今日という日はやり直すことが出来ない。リセットして今朝に戻ることは出来ない。一日の終わりは小さな死だ。だが休日はまたやってくる。それはどこか人生のやり直しに似ている。大げさに云えば、死にゆくものが若い頃の自分に一通だけ手紙を書けるとしたら……そんな気持ちでこれを書いている。
 どうか休日の前夜に、そして朝にこれを読んでほしい。そして、今の僕のような後悔を味わうことのないようにして欲しい。

 別にあれをしろ、これをしろとノルマめいたことは云わない。大切なのは意欲だ。休日の終わりや仕事中にはあれほど高まりやすい意欲が、なぜか休日を迎えるとどこかに逃げ去ってしまう。

 意欲は、いまここにある。これから寝て出勤しなければならない僕はそれを持て余しているが、休日を迎えるあなたにはぜひ必要なはずだ。

 僕はこの手紙に意欲を封じ込めて(出来ることなら瓶詰めにしたい)、あなたに送る。

 

 どうかよい一日を過ごして欲しい。

 

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