やすだ 😺びょうたろうのブログ(仮)

安田鋲太郎(ツイッターアカウント@visco110)のブログです。ブログ名考案中。

そもそもなんでツイッターを始めたのかという話

 

 

 まだこの世に安田鋲太郎が存在しなかった頃の話だ。

 

 そう、2014年秋。僕は30代後半で、職場と家を往復するだけの単調な日々を送っていた。働いては読書、あと酒。ひたすらこの繰り返し。友達はといえば、地元の無教養な連れがかろうじて数人いる程度だった。

 

 その日、僕は珍しく仕事帰りにライブを聴きに行った。5組か6組のバンドが数曲ずつ演奏する、よくある形式の野良ライブだ。知り合いに「演奏するから聴きに来てくれ」と頼まれたので、それほど興味もないけれどまあ、みたいな感じで行ったのだった。

 

 なにせ相当なインドア派なので生演奏を聴く習慣はまったくないのだが、行ったら行ったでBARを貸し切った会場にいろんな肌の色の人たちが入り混じっており(この店では以前パンク男の鉤十字のアクセサリーにイスラエル人客がブチギレて一触即発という騒動があった)、ハイネケンを飲みながらすっかり非日常感を楽しんだ。

 

 とにかく 生のネオロカビリーの迫力!

 

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 ネオロカビリーといえばストレイ・キャッツ。そしてウッドベース。

 

 ……については今回はどうでもいい。また黒人のサックス演奏にもかなり感動したのだがその話もパスする。

 今回話したいのは、そう、ガールズパンクバンドだ。略してガルパン。

 ガルパンの演奏の間、僕はステージに釘付けだった。全員小柄なのに大物感溢れる演奏。特にドラムの疾走感が凄まじかった。やはり人は舞台上で輝く。だから王様や大富豪が舞台女優を見初めるなんて話が古今東西にあるわけだ。サロメも踊らなかったらヘロデ王の興味をそこまで惹きはしなかっただろう。戦闘美少女がコアなファンを掴むのも、ようするに戦いというのが最高の舞台だからだ。

 

 とはいえ素人は素人なので、演奏が終わると、ネオロカビリーも、サックスも、ガルパンも、ちょっと楽屋に引っ込んだかと思うと、しばらくして客席にひょいと座り他バンドを聴いたりしていた。
 客席では「良かったよ!」と客が代わる代わる声をかけていた。僕も「良かったよ!」とガルパンに声をかけると、彼女らは「ありがとうございますー」とニコニコ返事してくれた。

 

 しかしその時、ふと思ったのである。


 「声をかければニコニコ返事してくれる、けれどそれだけで、僕は誰なんですかと問われれば誰でもない、ただのモブファン。それってなんだか、少し悲しいな」と。


 職場と家の往復にすぎない生活。そのうち何かしようと思ったり思わなかったりしつつも、どんどん日々は過ぎ去ってゆく。やがて僕はあっという間に40歳になり、50歳になり、60歳になるだろう。分不相応な夢を持っていたのは、遙か昔の事だ。

 しかし、自分も何か表現したい、何か「外に出すもの」が欲しい。もしそうなったら、

 

 「いまの演奏すごく良かったよ!」
 「ありがとう。ところであなたは?」
 「いやその、僕はただのモブファンです」

 

 ではなく、

 

 「いまの演奏すごく良かったよ!」
 「ありがとう。ところであなたは?」
 「喪部田モブ夫という者ですが」
 「え、あの有名な喪部田さんだったんですね!」

 

 ……こんな感じにならねえもんかな、と。

 

 虚栄心っぽく聞こえるかも知れないが、というか書いててかなり恥ずかしいのだが俺の本音だ聞いておけ。健全な名誉欲だって世の中にはあるはずだ。その時自分が感じたのは、とにかくそんな感情だった。

 

 □

 

 かくしてその数週間後、僕はツイッターを始めた。


 アカウント名は、フックスの翻訳者である安田徳太郎と、日本におけるゲームブック・TRPG・ボードゲーム紹介の第一人者である安田均、それから強そうなイメージが欲しいので、昭和のロボットヒーローのボディの接合部分に鋲(リベット)が打ち込んであるあのイメージで「鋲」を入れ、

「安田鋲太郎」

 に決定。

 

 アカウントのキャラづけは、澁澤龍彦・南方熊楠的なペダントリーと、ジジェクのような舌鋒鋭い批評家を足して二で割ったような感じで行きたい、と考えたのだった(赤面)。

 

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 やはり格好いいといえばこの人たちでしょう。

 

 そして6年が経った。

 いきなりアルファになってドカーン、みたいな感じではなかったが、こつこつ続けて、フォロワーは先日ようやく3000人を越えた(祝!)。前回のブログも2日間で1000以上のアクセスがあった(祝!)。いっちょまえにアンチもそこそこいる(呪!)。友達もけっこうたくさん出来た(祝!)。そして一番大事な事なのだが、さまざまな他人の話に耳を傾けることによって多くの学びがあった。

 

 もしツイッターを始めていなかったら、僕はいまよりも頭が固く、発想が旧弊で、なにより鬱屈と不全感を溜め込んだ人間になっていただろう。あぶないあぶない。

  6年ぶりにあの空想をしてみる。

 

 「いまの演奏すごく良かったよ!」
 「ありがとう。ところであなたは?」
 「安田鋲太郎という者ですが」
 「……えーと、どういう方でしたっけ?」

 

 まだ少しフォロワーが足りないな!

 

 けれど、少なくとも僕は、名乗る名前は手に入れた。まあ現実としては安田鋲太郎なんて誰も知らんだろうが、とりあえず言ってみることは可能になった。それは、そういう答えがなにもない頃に比べたら、それなりの進歩じゃないでしょうか。

 あの時の自分に教えてやりたい。6年後の僕はそれなりに頑張ってるよ! と。