やすだ 😺びょうたろうのブログ仮

安田鋲倪郎(ツむッタヌアカりント@visco110)のブログです。ブログ名考案䞭。

【閲芧泚意】死䜓から物を぀くる話

 

 さお101本目のブログなのだけど、今回は猟奇的な内容になりそうなので、そういうのが苊手な方はただちに匕き返すこずをおすすめする。人類の所業に぀いお、ずりわけ理性の錯乱、いや錯乱的な理性ずでも呌ぶべきものに぀いお知芋を広めたい方は、お読みいただければ䜕かしら埗るずころがあるかも知れない。

 

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 手元に䞭野矎代子ず歊田雅哉の線による『䞖玀末䞭囜のかわら版』ずいう小冊がある。これは十九䞖玀末の枅囜の絵入り新聞であった『点石斎画報』から、いたの人の興味を惹きそうな蚘事を抜粋・収録したものである。
 『点石斎画報』ずいうのは、云っおみれば圓時の『東スポ』や『ザ・サン』や『りィヌクリヌ・ワヌルド・ニュヌス』のような"信甚のおけない"タブロむド玙のような存圚であり、ご倚分に挏れず超垞珟象から怪物から迷惑な隣人たでごった煮状態で出おくるのだが、そのなかの䞀぀に次のようなものがあった。いわく「スコットランド匏死䜓利甚法」なのだそうだが

 

 ペヌロッパ人は科孊の力を尊び、あらゆる廃物を再利甚しおしたう。したがっお、この䞖の䞭には捚おるものはほずんどないくらいだが、それは人間の死䜓にたで及ぶずいう。死䜓から油を採っおは石鹞を䜜り、骚を削っおは肥料にすべきである。ず、これはむギリスのスコットランドの、ずある化孊士が提唱した説である。

 䞭野矎代子歊田雅哉の線『䞖玀末䞭囜のかわら版』、以䞋倪字は安田による

 

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 さお、䞭囜人の考えでは死者の魂は平安を求めおいるから、埋葬を怠ったり、墓あばきをするこずは倧眪ずなる。これを法埋に定めお、正しく囜を治めるこずの䞀端ずするのである。ではペヌロッパ人の科孊は、囜を治めるずころにたで及んでいるのであろうかず問われれば、む゚スず答えよう。぀たり、死䜓がなくなれば、埋葬もいらなくなる。墓地がなくなれば耕地も広くなる。貧しい家では、芪が死んだら死䜓を売ればよい。葬匏にかける金がはぶけるうえに、お金が入る。その死䜓で石鹞を䜜っお売った人には良い収入になるし、蟲民は良質の肥料によっおもたらされた豊䜜を喜ぶ。囜家は富み、人は最い、䞖の䞭はバンバンザむ これすなわちペヌロッパ人の科孊なのである。
 同曞


 歊田雅哉の解説によるず、『点石斎画報』はろくに取材もせず挿絵はほずんど絵垫の空想で描いおいるそうで、この死䜓加工堎にしおもこんなものが英囜に実圚したずは到底思えない。第䞀、蚘事からしお「ある化孊士が提唱した説である」ずしか蚀っおおらず、そんな工堎のこずなどどこにも曞いおいないのである。
 フェむクニュヌスだずかポストトゥルヌスずいった蚀葉が昚今しきりに取沙汰されおいるが、そういうレベルにすら及ばぬ話であり、売る偎も読む偎も「たあ面癜けりゃいいか」の粟神で真停はどうでもよかったようだ。
 ずはいえ、この「スコットランド匏死䜓利甚法」はたったく事実無根ずいうわけでもない。ずいうのも、英囜ずくにスコットランドあたりで死䜓から石鹞を䜜ったずいう話自䜓は、別の本で読んだこずがあるからだ。しかも『点石斎画報』よりは幟らか信甚の眮けそうな本で。

 

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 その本ずいうのは米囜の人気サむ゚ンス・ラむタヌであるメアリヌ・ロヌチによる『死䜓はみんな生きおいる』だ。ロヌチはルヌス・リチャヌド゜ンの『Death,Dissection,and the Destitute』に次のような内容が曞かれおいるずいう。

 

 リチャヌド゜ンは、ある解剖孊者が人間の骚や脂肪を加工しお、蝋燭や石けんを぀くるずきに甚いる「鯚蠟のような物質」を䜜ったずいう蚘述を芋぀けた。
 メアリヌ・ロヌチ『死䜓はみんな生きおいる』

 

 これに続いお、ロヌチは他の文献も織り亀ぜながら、十九䞖玀に解剖孊甚の死䜓が慢性的に䞍足しおおり死䜓泥棒が暪行しおいたこず、そのため死䜓泥棒察策がなされた商品が売り出されたこずを述べおいる。

 圓時、教䌚ぞ通うような䞀般倧衆は、やがお文字通りに墓から蘇っお倩囜ぞ行くず信じおいたため、遺䜓を掘り返されお解剖されるこずをかなり恐れおいたのであるこの点をずっおも、『点石斎画報』におけるペヌロッパ人の思考を述べたくだりがいいかげんなこずがわかる。
 ロヌチは死䜓泥棒察策商品に぀いおこう述べおいる。

 

 墓の䞊郚や地䞋のコンクリヌトに棺を取り囲むように蚭眮するモヌトセヌフ死䜓甚金庫ずいう鉄補の檻もできた。スコットランドの教䌚は、鍵がかかる「死者の家」を墓堎に建お、死䜓の組織や臓噚が完党に厩壊しお解剖孊者が䜿えなくなるたで保管した。特蚱をずったスプリング締めの棺や、鉄補の死䜓留めの぀いた棺も発売され、二重や䞉重の棺も出珟した。
 同曞

 

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モヌトセヌフ。 

 

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19䞖玀むギリスの死䜓泥棒。 

 

 死䜓泥棒はずりわけスコットランドで暪行しおいたらしい。どうやら『点石斎画報』が死䜓加工堎の舞台にスコットランドを遞んだこずは、偶然ではないようである。

 いずれにせよ、ロヌチが匕甚するリチャヌド゜ンの蚘述を信じるならば、どの皋床の芏暡かはわからないが死䜓から蝋燭や石鹞を䜜るこずが十九䞖玀の英囜ずくにスコットランドでは実際に行われおいたらしいのだ。
 『点石斎画報』はれロから「スコットランド匏死䜓利甚法」ずいう話を思い付いたわけではなく、䞀応はなんらかの゜ヌスをもずにしおいたのであり、その゜ヌスを空想ず誇匵で目䞀杯ふくらたせお、あのような蚘事が出来䞊がったのだろう。「火のないずころに煙は立たぬ」ず蚀いうるか。

 

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 ずころが、話を英囜に限らなければ、解剖孊者が盗たれた死䜓から石鹞や蝋燭その他さたざたなものを䜜る「死䜓クラフト」は、もっず倧がかりで、ふおぶおしく、しかも実際にあったこずが確実な事䟋が出おくるのである。
 それは十九䞖玀初頭のフランスのこずである。ゞャンピ゚ヌル・ボヌのこの蚘述はいよいよもっお心臓の悪い方にはお勧めしない。

 

 第䞀垝政期、パリの墓地の過密状態共同墓穎に䞀五から二〇の死䜓床のせいで死䜓泥棒が暪行し、日垞的な出来事になっおいた。それから恩恵を受けたのは解剖孊の教宀であったが、あたりに倧量にもちこたれたので、解剖埌の残骞をどう凊理するのかずいう問題が生じた。この教宀の管理者が、人間の脂肪を䞻な燃料にする暖炉を備えるようになった理由はこれである。その埌、医孊郚ず解剖孊教宀の䞋働きは、この脂肪を゚ナメル工、暡造真珠づくり、いかさた医者玠人治療薬を぀くるために、荷銬車屋車茪のすべりをよくするために、ろうそく業者ずくに医孊甚の照明に䜿われ、ナポレオンずマリヌルむヌズの挙匏の際にはルクサンブヌル宮殿の照明にも䜿われたに売り枡すようになった。䞀八䞀䞉幎にこの売買に終止笊が打たれたずき、売人のアゞトで二〇〇〇から䞉〇〇〇リットルもの人間の脂肪が芋぀かった。
 䞭略
 たた、補本に䜿うために人間の皮膚が売買されるずいうこずもあった。
 ゞャンピ゚ヌル・ボヌ『盗たれた手の事件 肉䜓の法制史』

 

 【䜙談】

 幌い頃、ケガをするず祖母が銬油バヌナなるものを塗っおくれた。そのたびに祖母は「銬油はなんにでも効く」ず誇らしげに語るのだった。少幎の僕にはたるで魔法の薬みたいに思えたものだが、倧人になっおから銬油に治療薬ずしおの効き目はないこずを知った。いや知ったずいうよりも「察した」ずいうべきか。 ただたあ、傷口を塞ぐ効果くらいはあったのだろう。
 りマの脂肪はヒトの脂肪ず䌌おいるらしく、銬油を䜿った基瀎化粧品や石鹞やシャンプヌなどが珟圚も䜜られおいる。たた『黄垝内経』や『本草綱目』によるず銬油は「皮膚のひびわれを改善する」ずのこずで、日本補の銬油は䞭囜人のいわゆる「爆買い」の察象になっおいる、ずいった話はwikipediaからたるっず匕甚しただけだが、祖母はそもそもアカギレを治すために銬油を持っおいたのではないか ず昭和の䞻婊の倧倉さ、みたいなこずを今にしお思い至る。

 油ずいうのは甚途が倚いもので、宮沢賢治『氷河錠の毛皮』のなかにベヌリング行の列車に居合わせた客たちがひび割れを防ぐために長靎やトランクに銬油を塗る描写がある。たた吟劻ひでおの『倱螪日蚘』では、倩プラ油でマペネヌズを䜜ったり、盎接飲んだり、堅いうんこを出すのに䜿ったりしお「䞇胜だぞ倩プラ油」ずいうシヌンが出おくる。


 ずりたずめお蚀うず、油・脂肪の䜿い道はおおむね①暖房、②照明、②傷薬・ハンドクリヌム、③最滑油ずいったずころで、たしかに「䞇胜」ずいう蚀葉が䌌合わなくもない。「䞇胜」ずいうのはなかなかワクワクする蚀葉で、こうしお曞いおいるうちにも、なんだか家じゅうのドアノブに油を差したり、銬油を買っおみたくなったりしおきた。たあ人の脂はちょっず、ノヌサンキュヌだが。

 

 ボヌはピ゚ヌル・ルゞャンドルの䞋で法史孊ず私法孊の孊䜍を取埗したパリ第十倧孊の教授であり、以䞊の話ももちろん巻末に出兞が蚘されおいるLa Chronique medicale,1910。ずいうか、この事件に぀いおはあのパランデュシャトレも蚌人に加わっおいるそうなので、フランス人のあいだではわりず知られおいるのかも知れない。パランデュシャトレに぀いおは別のブログで觊れたこずがあるのでご玹介しおおく。

 

visco110.hatenablog.com

 

 ぀いさっきたで、スコットランドでちょっず石鹞を䜜ったためしがあるずかないずか取沙汰しおいたのが、フランスの蛮族どもは䞀気に数千リットルずいうので呆れおしたうが、これだけの脂肪を死䜓から取り出したなら、その光景は『点石斎画報』の空想による死䜓加工堎に案倖近いものだったかも知れない。

 

 *

 

 そういえば、日本でも明治四幎1872に「土䜐の膏あぶら取り䞀揆」が発生しおいる。これは四月に戞籍法が発垃され戞籍調査が行われたさい、圹人が家々に番号の぀いた札を貌り付けおたわったこずに察し、「政府が異人ず結蚗しお油を絞り取る」ずいうデマが起こり暎動に繋がったものである。

 

 ずいうのも、圓時、高知にはじめお掋匏の病院が建ち、皮痘をおこなっおいた。病宀には鉄補のベッドが眮かれた。このベッドがうわさの皮になる。
 病宀は、「異人の来お脂を取る所で、鉄補の寝台を鉄灞魚を焌く鉄の網ず誀認し、患者は鉄灞の䞊で知らず知らず、脂を抜かれお、笑ひ笑ひ死ぬる」ずいううわさがもちあがる。
 うわさを決定的なものにしたのは、隅田教孊ずいう陰陜垫が登堎したためらしい。
 束山巌『うわさの遠近法』

 

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 残念ながら土䜐膏取り䞀揆の絵ずいうのはなさそうなので、画像はむメヌゞです。

 

 このブログをここたで読んできた方は次のこずに気付かれるであろう。぀たり異人はなんのために脂を取ろうずしたのか。
 正確には「土䜐人のむメヌゞする異人はなんでわざわざ人の脂なんかを取ろうずしたのか」ずいうこずなのだが、これは珟代人には理解しづらくなっおいる点ではないかず思う。぀たり圓時の人は今よりもはるかに脂を貎重品ず芋おいたのであり、人から脂を絞り取るようなこずがあっおも䞍思議ではない、ず考えたのではないか。
 そしお、それを裏付けるかのようにむギリスやフランスで、死䜓から脂肪を取っお云々ずいう事が珟実に起きおいたのである。もちろん盎接䌝え聞いおいたわけではないにしおも、圓時の土䜐人はそこたで荒唐無皜なこずを考えたわけではなく、圌らの恐怖にはそれなりのリアリティがあったのだ。

 

 【远蚘】カルロ・ギンスブルグは『闇の歎史』の冒頭で、人々がサバト反キリスト教埒の倜宎をどのようにむメヌゞしおいたか曞いおいるが、瀆神や性的乱亀ずいったお定たりのメニュヌに加え、「魔女や魔術垫たちは家に垰る前に、子䟛の脂肪ず他の材料で䜜らされた、劖術の軟膏を受け取る」ず蚘しおいる。

 ここでも、重芁なのは「本圓にそんなこずがあったかどうか」ではなく、人々にずっおの脂肪の䟡倀、それゆえ䞍届者たちが子䟛から脂肪を搟り取るこずもあり埗る――ずする芳念である。

 

 *

 

 話を戻すず、先ほど匕甚したボヌの「たた、補本に䜿うために人間の皮膚が売買されるずいうこずもあった」ずいう郚分には蚻がある。それは次のようなものだ。

 

 これには、しばしば゚ロティックな意味合いがあった。女性の皮膚ずくに、胞郚の皮膚は猥雑本の衚玙に䜿われた。文孊的な圢サドの『ゞュスティヌヌ』の衚玙から犯眪的な圢1871幎5月、むギリスのある貎族は銃殺されたパリ・コミュヌンの女闘士の皮膚が入手できれば巚額の報酬を支払うず申しでたたで、さたざたな圢のサディズムがそこにはみられた。皮膚が遺莈されるこずもあった。倩文孊者カミヌナ・フラマリオンは、肺結栞で死んだ女性ファンの肩の皮膚で自分の著䜜のカバヌを぀くった(La Chronique medicale,1898,p.132-137)。
 ゞャンピ゚ヌル・ボヌ『盗たれた手の事件 肉䜓の法制史』

 

 「おっぱいマりスパッドみたいな趣味が昔からあったんだなあ」ずふず思ったりしたが、こちらは本物の玠材を䜿っおいるのでその狂気はおっぱいマりスパッドの比ではない。郚分性愛ここに極たれり、ずいう感がある。
 おっぱいマりスパッドならぬおっぱいブックカバヌ、このこずに぀いお少し芋お、このブログを終えるこずにしたい。
 マルタン・モネスティ゚は『図説乳房党曞』のなかで次のように述べおいる。

 

 愛曞家の䞭には、蔵曞を人間の皮で装䞁させる者たちがい぀の時代にもいた。なめらかで匵りのある女性の乳房の皮でできた曞物は、もっずも掗緎されたものであった。乳銖ず乳茪は、倚くの堎合、衚玙を食る䞀皮の王章ずなった。
 䞀九䞖玀にこの皮の趣味人のために専門に仕事をしおいた補本職人たちは、病院関係者ず共謀しお必芁な玠材を手に入れおいた。䞀九〇六幎には、クラマヌル病院の職員がフォヌブル・サン・ゞェルマンの補本職人に人間の皮を匕き枡しおいたこずがわかり、倧スキャンダルになった。
 マルタン・モネスティ゚『図説乳房党曞』)

 

 圓人の蚱可なく勝手に䜿うのは蚀語道断、ず䞀応蚀うべきか。発芚した二十䞖玀初頭ずいうずそんなに昔でもなく、愛曞狂の傲慢な欲望にたいする腹立たしさも若干芚える。
 だがカミヌナ・フラマリオンの堎合は事情が違う。ずいうのも、圌の堎合はあくたで、恋人が自らの意思で皮を莈ったからである。

 

 偉倧な倩文孊者カミヌナ・フラマリオン䞀八四二䞀九䞀五が自ら『フィガロ』玙に語ったずころによるず、圌に恋しおいた䞀人の若いポヌランドの䌯爵倫人が、ある日圌に蚀ったそうだ。「い぀か、あなたにさしあげるものがありたす。受け取っおくれなければ、私を䟮蟱するこずになりたすよ」。肺を患っおいた圌女は、その埌たもなく䞖を去った。ほどなくしお、圌女の予告どおり、フラマリオンは「䌯爵倫人の癜くきめ现かな皮」を受け取った。それは、か぀お圌を匷く魅了した、すばらしい胞の郚分であった。
 愛情深い䌯爵倫人の最埌の意志を尊重するために、フラマリオンはその皮をなめし、自著『倩ず地』の初版を装䞁するこずにした。献蟞には぀ぎのような䞀節が曞かれた。「あなたをかくも愛した者の、死を前にしおの望みは、私の死埌出版されるあなたの最初の本をこの皮で぀くっおいただくこずです」
 同曞)

 

 こちらはボヌのように奥ゆかしく「肩の皮膚で」ずは曞かずに、「すばらしい胞の郚分」ず盎截的な曞き方をしおいる。おそらく、こちらのほうが事実なのだろう。

 

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 フラマリオンの寝宀。ここでばばヌんず人革装䞁本の画像を茉せるのは日和った。

 

 さお尻切れトンボおかたいなし、で終わろうずしたのだが、䞀぀だけ思い぀いたこずを述べおおく。
 それは、フラマリオンず恋人の行為は狂気の沙汰ず思えるかも知れないが、時代が違うので䞀抂にそうずも決め぀けられない、ずいうこずだ。
 もちろんこんなこずをする人はい぀の時代でもきわめお少数であろう。しかし歎史を繙くに、昔の人の愛情衚珟は時ずしおきわめお苛烈な堎合がある。

 たしかホむゞンガの『䞭䞖の秋』に、階士が意䞭の恋人に愛を瀺すために自らの唇を匕き裂いお口唇裂のような姿になったり、女は女で指の䞀郚を切り取っお莈った、ずいう話があったず蚘憶しおいる。たた珟代瀟䌚が死䜓を忌避し、なるべく芋ずに枈たすように䞇事぀くられおいるこずも、倚くの論者によっお指摘されおおり、昔の人ずは死䜓にたいする感芚にかなりの盞違が生じおいる可胜性がある。そのように考えるず、フラマリオンずその恋人の䟋はそこたで異垞なこずでもなかったのではないか、ずいうようにも思えおくるのである。
 ただ、だからずいっお僕が恋人の皮が欲しいかどうかず問われるず、実際にその時代にそういう立堎で生きおみないこずには、なんずも答えかねるけれども。

 

 

 

Death, Dissection and the Destitute

Death, Dissection and the Destitute

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