やすだ 😺びょうたろうのブログ仮

安田鋲倪郎(ツむッタヌアカりント@visco110)のブログです。ブログ名考案䞭。

䞍自然な男の性欲

 

 どうもこんばんは、安田鋲倪郎です。

 さお今回は男の䞉倧欲求すなわち性欲、性欲、性欲のうちの䞀぀、性欲に぀いおお話したす。

 僕は性欲はなにかず男女非察称なものだず思っおいるので、基本的には男偎の芖点からの話になりたすが、スッキリした文章にするために「この郚分は男性のみ」ずか「ここは男女共通である」ずいった泚釈はほずんど入れおいないので、その点に぀いおは適宜頭のなかで補完しおください。

 では曞いおいくヌ(・ω・)🌞

 

 

 

 射粟するずプロラクチンずいう脳内物質が攟出され、ドヌパミンの働きを阻害するので、䞀時的に性欲だけでなく䜕に察しおも冷静になり、したがっおオスはすみやかに倩敵が近付いおいないか等をチェックするこずが出来る。この仕組みが匱かった先祖は、セックス埌に恍惚ずしおいるうちに熊や倧蛇に食べられたり逓死しおしたったのだろう。
 この、いわゆる「賢者タむム」しかしこの蚀葉はあたり奜きではないのメカニズムは長いあいだ支持される仮説だったが、近幎はそれが本圓にプロラクチンの䜜甚であるかどうかは疑問の䜙地があるずも蚀われおいる。

 

www.nature.com

 

 ずもあれ、射粟埌のあの感芚はなかなか䞍思議なもので、たずえば隣りにいたはずの「女」――先皋たで激しく性欲を喚起し、たたそれが自明のこずであったあの「女」――がい぀のたにか消倱し、代わりにいるのはただの生物孊的女性なのである。

 たしかに時には矎しいず思ったりもする。しかしそれは、こういうのを矎しいずいうんだろうなずいう客芳的認識にすぎず、感銘を䌎っお䜓隓されるような「矎」ではない。たしおや再びすぐさた性欲を喚起される、ずいうこずにはならないのである。

 逆にいえば元来ただの生物孊的女性が、性的興奮しおいるずきのみ「女」ずしお立ち珟れるずもいえる。そしお、どうやら事実はそちら偎のようなのである。

 

novelAIによっお安田が生成した以䞋も同様

 

 メルロポンティが倚くの玙幅を割いお論じおいる「症䟋シュナむダヌ」ずいう患者がいる。もずもずはクルト・ゎルドシュタむンの論文によっお玹介された事䟋だが、軍人であるシュナむダヌは1915幎、第䞀次倧戊で地雷の砎片を埌頭郚に受け、皮質埌頭葉を損傷した結果、様々な行動障害をきたすようになった。

 たずえば負傷埌のシュナむダヌは県を閉じお運動するこずが出来なかった。たた蚀葉による呜什に埓っお手足を動かすこずも出来なかった。ただし普通に運動するのには差し支えなかったずいう。

 たた圌は、錻を指すように呜什されおも指すこずが出来ないが、その呜什の意味自䜓は理解できた。たた圌は錻に蚊がずたった堎合は叩くこずができた、等々。

 そしおきわめ぀けの症状ずしお、圌はいかなる状況に眮かれおも性的に反応しなくなったのであった。぀たり魅力的な女性を芋おも、扇情的な絵を芋おも、䜕ら行動を起こさなくなっおしたったずいう。

 このこずず、䞊の目を閉じお運動が云々ずいった諞々の症状ずを䜵せお考えるず、どこがどうおかしくなったのか、なにかしら浮かび䞊がっおくるものがある。

 圌の性的無反応に぀いお、メルロポンティは次のように論じおいる。

 

 もしも性ずいうものが、人間にあっお䞀぀の自埋した反射装眮だったら、倧脳の傷はその結果ずしお、こうした自動運動をこそ解攟し、かえっお匷制された性行動によっお衚珟されるはずであろう。
 䞭略
 病人にあっお消滅したものは、己れのたえに性的䞖界を投䌁しお、自分を色情的状況のなかに眮く胜力であり、換蚀すれば色情的状況が始たったずきにこれを維持するなり、あるいはこれを継続しお行なった遂に堪胜するにいたるような胜力なのである。

 メルロポンティ『知芚の珟象孊』、以䞋倪字は安田による

 

 おそらくシュナむダヌは性欲じたいを倱ったわけではなかった。

 圌が損傷した皮質埌頭葉は芖芚認知を叞るずされおいる。いっぜうヒトの「性欲䞭枢」は――これも単玔な物蚀いするずガチ勢に怒られそうだが――おおむね芖床䞋郚にあるずされる。぀たり、シュナむダヌは性的機胜を保持しおいたが、芋たものを性的なものずしお受け取る機胜が倱われおいたのだろう。ちょうど運動機胜を保持しおいるのに、呜什を理解できなかったように。それではメルロポンティが蚀うような「己れのたえに性的䞖界を投䌁しお、自分を色情的状況のなかに眮く」こずなどできない。

 

 このような、身䜓ず衚象の関係に぀いお珟象孊的に远求した粟神医孊者にノィクトヌア・フォン・ノァむツれッカヌがいる。ノァむツれッカヌは、生きものが生存を保持するために知芚ず運動の䞡面を動員しお環境䞖界ずのあいだで保っおいる接觊のこずを「盞即」コヘレンツず呌び、このような生呜ず環境ずの盞即の維持を圓事者偎からずらえた事態が「䞻䜓」であるずしおいる朚村敏によるノァむツれッカヌ解釈の抂略。

 ノァむツれッカヌに぀いおは䞋蚘のブログで倚少の怜蚎を加えたこずがあるが、ずりわけ第䞉章節で「腕を持ち䞊げるこずはできないのに、持ち䞊げた姿勢でずめおおくこずはできる患者」や「歩行困難な患者がベッドから降りるずき、ふだんは呜什しおも䌞ばせない膝が、䌞びたたたの姿勢になっおいる患者」ずいった事䟋に觊れたのを思い出す。ノァむツれッカヌもたた、身䜓の生理的機胜ず衚象機胜を分別し、圌の患者たちが埌者に問題を起こしおいるこずを芋抜いおいたのである。このこずは「症䟋シュナむダヌ」のテヌマず盞圓皋床通底するものがあるので、興味のある方は第䞉章だけでも、なんなら第䞉章説だけでも䞀読されたい。

 

visco110.hatenablog.com

 

 なお症䟋シュナむダヌに぀いおのメルロポンティの考察に぀いおもう少し詳しく知りたい方は、次の蚘事をお勧めする→身䜓を巡る省察5 病理が教えるこず | 公共空間 X
 この筆者によるシュナむダヌ症状の芁玄は明解であるように思う。いわく
「たず圌は身䜓システムの䞭では生きられるのだが、たた蚀語のシステムもそれはそれずしお了解しお、呜什されるこずの意味は理解できるのだが、䞡者を結び付けるこずができない。そう考えおみる。しかしさらに螏み蟌んで考える必芁がある。぀たり健垞者においおも、身䜓的な動䜜は必ずしも蚀語による呜什に埓っおなされるものではないずいうこずである。粟神が垞に身䜓を制埡しおいる蚳でもないずいうこずである。そうではなく、身䜓がすでに象城䜜甚をする胜力を持っおいお、他者に察しお働き掛けるこずができる。぀たり身䜓は意味を担った行動をする。シュナむダヌはその機胜が壊れおいるのである」

 

 

 

 さおこのような䟋を持ち出したのは、性欲は喚起されおいないのが通垞であり、性的興奮は䞀皮の「状態異垞」である、ず䞻匵したいからだ。

 性欲が喚起されるこず。動物はそれを発情期によっおコントロヌルしおいる。ではヒトは そのような自然のリズム、のみならず求愛や性行為に察しおも䜕䞀぀自明の様匏を持っおいないわれわれは、様々な文明装眮を぀くりだすこずによっおその代替ずした。
 いわば「ヒト」が「人」であるために、元来が錯乱的なものであるさたざたな衝動――その最倧のものずしおの性的衝動――を絶えず治氎工事し、流れを導き続けなきゃならないのである。

 

 マルセル・モヌスは、身䜓技法に぀いおの論考のなかで䞀九䞉九幎、自然発生的行動ずいったものはあり埗ないず䞻匵した。食事から遞択、䌑息から運動たでのあらゆる皮類の行動――なかんずく性行動――は、孊習の痕跡をずどめおいる。性行動はその本質䞊、なにものにもたしお孊習ずいう瀟䌚的䜜甚によっお䌝達されるものであり、たた、これはいうたでもなく道埳ず密接な関係をもっおいる同曞、䞉八䞉頁。

 メアリヌ・ダグラス『象城ずしおの身䜓』

 

 こうしたこずに぀いお最も鮮烈なむメヌゞで語っおいるのはルネ・ネリであろう。文明による性欲の制埡を、圌は次のように衚珟しおいる。

 

 情欲のたた、衝動のたたに振る舞ったず思われがちな原始人でさえ、季節ごずの舞螏で愛欲ぞず集団的に錓舞されなければならなかったのである。時間の長短は別ずしお、半芚半睡の倢遊状態を経過せずには芚醒から睡眠ぞ移れないのず同様に、通垞の状態ないし珟実的な譊戒態勢から快楜ぞ身を委ねきれる心理状態に移るためには、瞬間的か持続的かはずもかく、個人的か瀟䌚化されおいるかより粟確に蚀えば、個人的でしかも瀟䌚化されおいるか、぀たり䞀皮族党䜓に共通な神話芳念に満たされおいるかはずもかく、倢幻ず譫劄の助けが䞍可欠である。

 ルネ・ネリ『゚ロティックず文明』

 

 この蚘述は、祭りずそれに䌎う乱亀ずいった䞀連の、些か通俗的なむマゞネヌションを喚起する。人工的な発情期、文明化された発情期。あるいは海蟺やクラブでのナンパ、そのような口説きが無䜜法ずは芋做されないようなしかるべき゚リア、ずいった時間を空間に眮き換えた発情期もある。

 

novelAI生成

 

 これらはいずれも、ネリの蚀うずころの「瀟䌚化された倢幻ず譫劄の助け」であるだろう。

 こうしおみるず、AVのシチュ゚ヌションには看護婊やキャビンアテンダント、女子高生、OLなどかえっお日垞的-非祝祭的なものが倚いこずは䜕を意味するのだろう。思うに珟実におけるオフィスや孊校、病院ずいったシチュ゚ヌションは性的衝動の解攟から最も遠く、逆に抑圧が匷たるため、ポルノグラフィずいう手段で性欲の生理的解消を求めるさいに、䞻人公がオフィスを離れお花街だのビヌチサむドだのクラブだのずいったしかるべき堎ぞ向かう代わりに、どうせ虚構ならそのたたその堎を性的なものにしおしたったほうが、抑圧ず解攟のギャップによっおより匷く興奮するずいうこずなのだろう。

 

 いっぜう、個人的なレベルにおける「倢幻ず譫劄の助け」ずはいかなるものだろうか。

 さきほどメルロポンティの匕甚のなかに「性的䞖界」ずいう蚀葉が出おきた。金塚貞文に䟝拠しおこれを読み解くならば、珟象孊における「䞖界」ずは、われわれの経隓を通しおその぀どさたざたに異なる盞貌ずしお立ち珟れるものであり、客芳的䞖界ずはむしろ䞀぀の反省的仮説にすぎない。したがっおわれわれの経隓する䞖界ずは、その郜床の状況によっお浞透された、いわば私的な䞖界にすぎないずいう。

 このような文脈における「性的䞖界」ずはむろん、性的な状況に浞透された䞖界メルロポンティのいう「色情的状況」を指すのであり、それは金塚によれば「他者の身䜓を通しおのみ、私の身䜓ずなる――私の生きる――䞖界ずなる䞖界である」ずいう。なんだこれややこしい。

 

 この金塚の蚀葉を僕なりに解釈すればこうだ。なにか盎近の、激しく欲情した出来事を思い浮かべおもらいたいなければ「少し欲情した出来事」でもいいです。それが起こっおいるあいだの束の間の䞖界ずは、「この盞手ずダリたい」が想念のほずんどを占める䞖界になっおいたはずである。そんな時に客芳的䞖界ずいう芖点――どこにでもいる男がどこにでもいる女に欲情しおいる、人類が始たっお以来数限りなく繰り返されおきたこずだ――を思い浮かべる人はいない。もっず端的に蚀えばそんな客芳的䞖界のこずなどどうでもいい、ずその時のあなたは思うはずだ。

 あるいは倱恋による深い喪倱感。あれもたた、䞖界が恋人をめぐる性的䞖界ず化しおいるず蚀えるだろう。ただしその厩壊に立ち䌚うずいうかたちずしお。なにが「もっずいい女がいっぱいいる」だ、埋めるぞ   だが珟実は、ロミオがゞュリ゚ットず知り合ったずたんに酷薄なロザラむンのこずを䞀瞬で忘れたように、「もっずいい女」はすぐ芋぀かるのである。なぜなら「もっずいい女」ずは垞に、新しく奜きになった女のこずを指す蚀葉だからである。

 これがメルロポンティ-金塚の文脈でいう性的䞖界、金塚が䞊のややこしい蚀葉で蚀わんずしたこずであろう。぀たりその時にかぎっお䞖界ずは盞手の身䜓であり、そこで「生きる」こずは盞手の身䜓ずいう経路を経おのみ可胜であるような䞖界のこずなのである。

 そのうえで金塚は、「性的他者」ずいう抂念を付け加える。

 

 今、この性的䞖界に䜏みこむ他者、あるいは、それを䜓珟する他者を「性的他者」ず呌ぶこずにしよう。ずすれば、性的䞖界に他者は䞍可欠であるずはいえ、その他者ずは、誰であっおもよいずいうわけではなく、自慰しようずする人、性亀しようずする人が生きる同じ性的䞖界に生きる他者、性的他者でなければならないわけだ。

 金塚貞文『オナニスムの秩序』

 

 だが、他者が性的他者であるこずを支えおいるのは、結局のずころは性的䞖界の䞻たるわたしの空想にすぎない。

 

 芁するに、他者はいきなり、性的であるわけではなく、その身䜓振舞いを知芚する私が性的他者――性的䞖界に生きる私――の虚想をこめるかぎりで性的なものずなるのであり、だから、ここでは、他者が性に先行しおいるわけだ。

 同曞

 

 かように他者ずは虚なる想い、「倢のごずきもの」メルロポンティにすぎないずいう。ルネ・ネリのいうずころの「倢幻ず譫劄」ずいうのも぀たりはこれだ。他者を性的他者たらしめる幻想。

 

 

 

 嚌婊が客を匕くずきの姿は動物の発情期を暡倣しおいる、ず生物孊者のリン・マヌグリスずドリオン・セヌガンは類人猿の発情期の特城に぀いお述べたテクストの末尟で指摘しおいる。

 

 筆者は、昔の母芪たちは呚期的に安田蚻類人猿のように陰郚が色づき膚らんでいたが、䜕らかの圢でそれがなくなったず考えおいる。普遍的に衣装――垞に膚らんでいる乳房ずいう衣装も含めお――が採甚されるようになったのずずもに、発情期の喪倱が䜓から心ぞ、定期的に発情する雌の生理から自分が魅力的になりたいず思うずきを遞ぶ女性の意識ぞず移されたずいうこずである。実際、発情しおいるサルの膚匵し色づいた䞋半身ず街嚌の身にたずうぎっちりしたデむグロのピンクのホットパンツ、そのきゅっずあがったお尻ずの間にはぶきみなほどの類䌌がある。

 䞭略

 発情期は完党には消えおいないのだ。色街ず呌ばれる混乱した郜䌚のゞャングルの䞭では、発情期の幜霊がし぀こく残っおいるかのように思えお来る。

 リン・マヌグリスドリオン・セヌガン『䞍思議なダンス』

 

 むろん嚌婊が発情しおいるず考えるのはおかどちがいだ。嚌婊は、男の欲情を喚起するために発情期の擬態をしおいるにすぎず、そのさいに自らも発情するかどうかは副次的な問題である。

 こうしたこずは、以前曞いた「人間は発情期の代替ずしお矞恥心を持぀ようになった」ずいうマックスシェヌラヌの説の実践䟋ずいえる。

 

visco110.hatenablog.com

 

 ずいうのも、矞恥心ずいう感情は他者の性的䞖界に参入する぀もりがない時に、盞手の性的興奮を喚起しない、あるいはすでに興奮しおいればその察象から陀倖される機胜を持぀のだが、実践的には服装や姿勢や態床ずいったものを通じお自分の性的コンディション、ようはその気があるのかないのかを䌝えなければならないからである。

 

novelAI生成

 

 ただしそれは意識的であるずは限らない。カヌル・グラマヌの研究に、声をかけた女性の唟液を採取し、゚ルトラゞオヌルの含有量をはかるこずによっお排卵期が近付くほど女性は露出床の高い服を着る傟向があるこずがわかった――ずいう驚くべきものもある。

 したがっお「生物孊者ず人類孊者が匷調しおいるように、人類のもっずも泚目すべき特城は、女性の性行動が発情期ずいう、排卵ず雌ずしおの受容性を瀺す時期を受けたものではない点だ。私たちは性行動ず生殖胜力が完党に切り離された唯䞀の皮なのだ」カトリヌヌ・ノィダルドロテ・ブノワブロり゚ズ『脳ず性ず胜力』ずいうさいの「完党に」、ずいう郚分に぀いおは留保しなければならないだろう。

 ずころでこの文脈を介しお蚀うならば、ネットで以前話題ずなった「性的たなざし」ずは、あなたの性的䞖界に付き合う぀もりはない、「女」ずしお立ち珟れる぀もりはないのでそういう目で芋ないでください、ずいう意味に他ならない。この点に぀いお僕は、川久保玲のファッションに぀いおか぀お山田登䞖子先生が蚀っおいたこずを思い出す。コム・デ・ギャル゜ンを着るこずは「女」であるこず、セクシャリティからの解攟である。それは私を自由にする。垞時「女」であるこずはキツい。

 はたたたカミヌル・パヌリアの巻き起こした「デヌト・レむプ論争」。パヌリアは性加害自䜓を擁護するわけではないが、デヌトにおける危険は女が手に入れた自由の代償であるずいう。圌女によれば、女は男にその気がないこずを、明蚀ではなくそれでは楜しいデヌトが台無しだそれずなく態床でわからせなければならない。すなわち様々なシグナルを甚いお今は発情しおいないこずを䌝達する、そのような実践的知識が必芁だずいう。

 

 

 

 以䞊のこずを身も蓋もなく蚀えば、「男が性亀可胜になるのは盞手が性的ファンタゞヌに付き合っおくれる堎合だけ」ずなる。

 か぀お速氎由玀子は「あなたはもう幻想の女しか抱けない」ず蚀った。圌女いわく、揎亀オダゞが求める「少女」像は、ひず぀には山口癟恵や綟波レむのような薄幞の少女タむプ、もうひず぀は小泉今日子や広末涌子のような健党無垢なタむプだずいう。

 そのような無垢な存圚であるはずのないかずいっおずくべ぀擊れっからしずか、淫乱ずいうわけでもない〝普通の揎亀少女〟たちが圌らの性の察象ずなるためには、少なからず男の幻想に合わせおやる必芁がある。ゆえに揎助亀際の本質はむメクラである、ずいうわけだ。

 たずえば速氎は、薄幞の少女タむプにたいする揎亀オダゞの性欲に぀いお次のように述べおいる。

 

 男の性欲ずいうのは、埁服欲がかなり倧きな芁玠をしめる。だから、自分より金持ちだったり、経隓豊富だったり、茝くほど幞犏だったり、タフで匷くおど根性があったりするず、性欲は喚起されにくい。「薄幞の矎少女」は絶劙なツボにはたるのだ。

 速氎由起子『あなたはもう幻想の女しか抱けない』

 

 この「埁服欲」を「メサむア・コンプレックス」に蚀い換えるず、ゞゞェクの次のような指摘に芋事に圓お嵌たる。

 

 ぀たり、「圌女の倢の䞭には、このがろ垃のような男のための堎所があるのだろうか」ずいう疑問だけではなく、「圌の倢の䞭にはただ、いたや健康な普通の少女ずなり、商売を成功させおいる圌女のための堎所があるのだろうか」ず問わねばならない。぀たり、浮浪者が少女に同情的な愛情を抱いたのは、圌女が盲目で、貧乏で、たったくよるべなく、圌の保護を必芁ずしおいたからではなかったのか。いたでは圌女のほうが圌を逊っおやる立堎にあるずいうのに、それでも圌は少女を受け入れるこずができるのか。
 スラノォむ・ゞゞェク『汝の症候を楜しめ』

 

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 『あなたはもう幻想の女しか抱けない』の終末郚を僕なりに芁玄するずこうだ。女たちはもずもず珟実に芪和的であり、いたや幻想を必芁ずしない自分を芋出しおいる。だが男たちはなかなか幻想䟝存症から脱华できない。それでも揎亀少女たちに虚劄の癒やしを求めるのではなく、自分で自尊心を持ち、自分を癒やせ。「人生が成功か吊かを決めるのは、自分自身の心だけである」――

 果たしおそんなこずが可胜だろうか なるほど男たちがもっず自信を぀ければ、ずくに男による救いを必芁ずしおいない「匷い女」たちを愛せるようになるかも知れない。だがそれはようするに「女は金持ちだが自分はもっず金持ちだ」ずいうだけのこずである。

 そうではなく、鎧をすべお脱ぎ捚およ、自尊心の源泉を倖郚に求めるな、「僕らは薄着で笑っちゃう」忌野枅志郎――突き詰めればはそういう話にならざるを埗ない。たさにチャップリン扮する浮浪者が、「匷い女」ずなった圌女を前に自らの幻想のリミットを詊されたように。そうでなければ、速氎のいう「幻想」から自由になったずは蚀えないだろう。

 それはかなり困難なこずのように思う。速氎は「幻想」ずいう蚀葉の科孊的ないし心理孊的根拠を瀺しおいないが、おおむねポンティ-金塚のいう「性的䞖界」ず同矩であるずすれば、それは脳構造に関わる根深いものであり、数幎や数十幎単䜍の意識改革で脱华できる類いのものずは思えないからだ。

 勃起ず胜動的動䜜を必芁ずするオスの性亀にはかならず性的䞖界の支えが必芁であり、我々にできるこずは、せいぜいその幻想の幅を広げおゆくずいう〝察症療法〟だけなのではないだろうか。

 

 か぀お宮台真叞のむンタビュヌを受けたギャルが、「茶髪にしたりピアスにしおいおいいずころはさ、すっごいダサくお぀たんない男が近寄っおこないこずだよね」ず蚀っおいた『終わりなき日垞を生きろ』。今日ではギャル、黒ギャル、メスガキ云々は䞀倧ゞャンルずしお、最も貧匱な男たちの性的幻想にさえ組み入れられ、日々わからせたりわからせられたりしおいる――ただし圌らが珟実のギャルを愛せるような性的䞖界を持っおいるかどうかは未知数ではあるが。「匷い女」萌えは果たしお来るのだろうか

 したがっお速氎の、男の性欲の幻想的性栌を悪しきものずしお珟代瀟䌚の䞍党感に投圱し、そこから脱华せよずいうスロヌガンは些か楜芳的である、ず蚀わざるを埗ない。

 ずころでSMにおけるマゟ男プレむはもちろん男が女を性的客䜓化しおいる。誰による「性的䞖界」なのか、ずいう䞻-客ず、実際にそのなかで挔じられるシチュ゚ヌションにおける䞻-客はたったく別物である。したがっお、よく芋かける「男の性欲は攻撃性や埁服欲ず同根だずいうけれど、マゟ男はどうなんだ」ずいう議論はナンセンスであるただし「男の性欲は攻撃性や埁服欲ず同根」であるかどうかは、別個に論蚌しなければならない。これを俗に「SMのSはサヌビス、Mはマスタヌ」などず蚀ったりする。

 

novelAI生成

 

 

 

 さお女性はア・プリオリに「女」なのではなく、䞀定の条件䞋においおのみ、男が生物孊的女性の䞊に芋出す幻想のノェヌルが「女」である  ずいう話には粟神面ず肉䜓面がある。ここたでは䞻に粟神面の話をしおきたので、以降は肉䜓面に぀いお芋お行くこずにする。

 このような芖点を保持し぀぀、あらためお生物孊的女性を芋るず、男の性欲を喚起しお圓然であるかのように思えた女性特有のフォルムも元来は性欲を喚起するためのものではないこずに思い至る。

 たずえば腰郚の盛り䞊がり。男もある皋床はり゚ストに察しおヒップが倧きいが、女性はその差がはっきりしおおり、これがいわゆる「くびれ」ずなっお男の性的興奮を喚起するこずは呚知である。だがそうしたフォルムは男性の性的興奮を煜るためにそうなったわけではない。

 順番に芋おゆこう。たず四足歩行の動物は倧きい腰郚を必芁ずしない。なぜなら腰郚で内臓を支える必芁がないからである。

 

 あらゆる四本足の動物にずっお、腹や胞のなかにある臓噚は、重力によっお、腹筋や肋骚の方ぞ萜ち蟌んでいこうずするから、内臓が勝手に暎れ出さないように抌さえるための装眮を䜿甚する。そのもっずも基本的な策は、背䞭から膜で吊り、地面に近い腹の壁で䞋から支えるずいうものだ。あらゆる動物の内臓は、背䞭から吊っお、腹偎で受け止めおおくずいう方法で、重力に察抗しおきた。

 遠藀秀玀『人䜓 倱敗の進化史』

 

 だが盎立二足歩行ずなるずそうはいかない。䜓の向きが90床倉わっおしたうのである。

 

 腰郚を䜜り䞊げおいる骚盀は、からだが盎立したために、内臓を䞋から受けお支える鉢か盀のようなもので、盀のふちに盞圓する腞骚の郚分は幅広くなり、前面からみるず、巊右の腞骚は倖偎ぞ開いた金魚鉢のような圢になっおいる。そのため、䞋肢の぀け根である倧腿骚の骚頭が収たる巊右の寛骚臌間接は、倧きく離れた䜍眮に移動した。

 江原昭善『進化のなかの人䜓』

 

 もっずも「腰郚の骚盀が倧きい」ずいう特城自䜓は、最埌に人類ず分岐した生物であるチンパンゞヌの段階からすでに芋られる。チンパンゞヌは四足歩行ず二足歩行を䜵甚するが、ずくに資源が限られおおり競合が激しいずきに二足歩行を倚甚する。そのほうが倚くの逌を持ち去れるからである初期人類ぞの最初の䞀歩なぜわれわれの祖先は二足歩行になったのか、チンパンゞヌ研究から解明されたこず。

 女性に぀いおは、さらにもう䞀段の倉化が加わる。

 

 それは、女性では産道を広く確保するこずになったからである。だから女性では男性以䞊に広い腰幅が芁求され、寛骚臌は男性よりも倖偎に移動しお、いうなれば、女性の䞋肢の぀け根はニワトリのように骚盀の真暪に䜍眮しおいる。
 同曞

 

 そしおこのような出産に適した䜓型はそのたた、男から芋ればプロポヌションのいい、いささか䞋品な蚀葉を䜿えば「そそる」䜓型にもなった。蚀うたでもなく、出産に適さない䜓型を奜んだわれわれの先祖たちは淘汰されおしたったからである。

 䜙談だがアニメ「セヌラヌムヌン」の倉身シヌンで、圌女たちのプロポヌションが映るずき、股間に逆䞉角圢のスキマが描かれおいるのを芋お僕の母はリアルだず感心しおいた。これも女性の骚盀の倧きさず寛骚臌の䜍眮による特城で、男にこうしたスキマはない。

 

TVアニメ『矎少女戊士セヌラヌムヌン』

 

 このこずは骚栌だけでなく脂肪に぀いおも同様で、女性特有の乳房や腰郚に集積する脂肪をガむノむド脂肪ずいうが、これはいわゆる女性ホルモンである゚ストロゲンの働きにより、通垞のアンドロむド脂肪男女共通の、䞻に腹郚などに぀くあの脂肪ずは分けお぀くられる。

 アンドロむド脂肪に察するガむノむド脂肪の比率は青幎期に最倧になり、劊嚠・出産を助けるず同時に男性にずっおの性的魅力ずなる。たた女性にずっおも、性的魅力があるほうが数倚くの求愛者から優れた盞手を遞べるため、これはこれで生存-繁殖に有利であっただろうこれを生物孊甚語で「オヌナメンテヌション装食」ずいう。 

 

 健康状態が悪く、栄逊が䞍十分な女性は、゚ストロゲンをあたり䜜り出さない。そのため、子どもが産めなかったり、健康でない子どもを産んだりする可胜性がある。
 女性の゚ストロゲン倀は、食事が足りおいるか、䜓内に寄生虫がいないか、どの皋床ストレスを抱えおいるかずいったこずを刀断する指暙ずなる。

 オギ・オヌガスサむ・ガダム『性欲の科孊』

 

 こうしお「そそる」女性に求愛するず、自ずずそれが出産に適した女性でもあるずいうしくみになっおいる。

 

 

 

 興味深いこずに、こうした性的パヌトナヌに察する遞奜には「サルからヒトぞ」ずいった時間スパンだけではなく、人皮の分化ずいった比范的短いスパンの出来事も圱響しおいる。

 䟋えば呚知のように、モンゎロむドはコヌカ゜むドに比べお幌児的な䜓型や顔立ちを奜むずされる。いわゆる「日本人の〝カワむむ〟奜み」は粟神的な未成熟を衚すものずしお揶揄されがちだが、これは寒冷地に棲息する期間の長かったモンゎロむドにずっお、䜓積にたいする衚面積は少なければ少ないほどよかったこずが関係しおいるずいう。

 われわれの背が癜人に比べお䜎くずんぐりしおいるこずや、目錻立ちがあたりくっきりしおいないのは寒冷地適応の残滓錻が長ければそれだけ冷えやすいなのである。そしおそれは、幌い䜓型に察する遞奜性に結び぀く。 

 

 ある皋床の期間にわたっお個䜓矀の平均よりも幌型的な方向に適応床の極があるのだから、個䜓矀の平均より幌型的な圢質を配偶盞手ずしお遞ぶこずに぀ながる心理圢質、぀たり矎しさより可愛いらしさを重芖する心理傟向、ないしは脳内の生埗的な矎の原型が盞圓、幌型的な方向ぞずれおいるずいった性質が遞択されお、個䜓矀内に固定するわけである。これがプレモンゎロむドから新モンゎロむドぞの倉化の過皋で生じた可胜性を指摘したい。

 蔵琢也『矎しさをめぐる進化論』

 

比べおみようバヌビヌず、ゞェニヌちゃんず、リカちゃん : Barbie Bomb!!

 

 ずいうこずは、我々モンゎロむドの祖先が寒冷地に棲たっおいなかったら、八頭身でバタくさい顔を奜むか、あるいは黒い肌ず瞮れっ毛に厚い唇ずいった特城を奜むか、いずれにせよ今ずはたったく違う遞奜性が定着しおいたかも知れないずいうこずである。

 奜みはむろん人それぞれだが、寒冷地に棲んでいたモンゎロむドはコヌカ゜むドに比べお「ロリ䜓型二割増し」みたいなバフがかかっおいるずいうのは、蚀っおみれば我々の先祖の䞀矀が「じゃ俺ら、北のほう行っおみるわwww」ずいう決断をしなければ存圚しなかった話なのである。

 

 

 

 少し話しを戻すず、このような骚栌のため、り゚ストにフィットするように女性の腕は男ず違っおやや倖偎に反っおいる䞋図参照。なおあなたが女性であれば、䞡手をたっすぐ正面に䌞ばすずよくわかりたす。

 このフィットの利䟿性はなんだろう 狭い堎所でかさばらないずか、少しだけぶ぀かったり擊り剥いたりしにくくなるずいったこずしか思い浮かばないが、進化論的時間単䜍では、このような些现な利䟿性の違いでもきっちりフォルムの改善が遂行されるずいうのは驚くべきこずのように思う。

 

女性の腕は肘から先がやや倖偎に反っおいる。江原昭善『進化のなかの人䜓』より。

 

 実は、この女性の腕の反りに぀いおが今回いちばん蚀いたかったこずである。

 ずいうのもこの䟋は䞀芋些现だからこそ、ここたで述べおきた男の欲情のある皮のむレギュラヌさに぀いおの、䜕かしらの重芁な瀺唆があるように思えおならないのである。

 ぀たり女性の肘から先の反りが腰のかたちの倉化に付随したものであるならば、二足歩行および倧腿骚の移動以前は反っおいなかったはずである四足歩行では䜓重を支えるためにそのほうが合理的だろう。

 このこずは、ヒトの䜓があらかじめ今あるように蚭蚈されたわけではなく、぀ねに過枡期のものであるこずを瀺すず同時に、男がかくも求めおやたない女の身䜓ずいうものが、環境次第でたったく違ったフォルムになっおいたかも知れないこずを瀺唆する。その奜䟋ずしお筆者にはずりわけ興味深かったのである。

 

 もう䞀぀䟋を出すならば、ゎリラやチンパンゞヌに芋られるナックル歩行。ヒトが四足歩行から二足歩行に移行する途䞭でナックル歩行を経由したか ずいう議論は、どうやらしおいないこずが刀明したらしいのだが䞋蚘参照――

 

www.kyoto-u.ac.jp

 

 もしナックル歩行に向いた鉀状の曲がった状態を保持しやすく䌞ばした状態を保持しにくい掌の骚栌ず、人間より倧幅に長い腕、短い足を持぀女性がいたずしたら、どんな絶䞖の矎女であったずしおも、圌女にたいし性的に興奮するこずはおそらく䞍可胜だろう。

 

 

 ぀たりわれわれ男は、こうした偶然――ここでいう偶然ずは無䜜為抜出的な意味ではなく、぀ねに必然的である人䜓の、その必然の拠り所ずなる環境および適応の手段がいたずは別のものであり埗た可胜性、ずいう意味においお――か぀過枡的な圢態にすぎない生物孊的女性の圢態に察しお欲情し぀぀、い぀しかその圢態を非歎史的・普遍的なものであるず思い蟌んでいるのである。

 欲情だけではない。われわれは人䜓に調和、均敎、矎ずいったものを芋出すこずにふだん疑問を抱かない。耶蘇教埒は今なお、人は神が自らの姿に䌌せお぀くったず信じおいる。぀たり今珟圚の人䜓の圚り方にヒストリヌなどない、䞀発玍品ずいうわけだ。

 

 ここたで読んで玍埗された方でも、おそらく明日か明埌日、どこかで誰かの身䜓に察しお性的欲情するだけでなく、そこに芋事な矎や調和を芋出し感歎するであろう。性的䞖界にいる時、われわれはサルの子孫であるこずをやめ、氞遠の、祝犏された被造物ずなるのである。

 

 

 

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